DIE VERWANDLUNG

カフカ「変身」 -本紹介-

「変身」の作者 フランツ・カフカ Franz Kafka


※このサイトはネタバレを含みません。

|変身のあらすじ

———「ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」———

布地の販売員をしているグレーゴルは突然のことに戸惑いながらも、彼はもう少し眠ってみようと試みるが、体を眠るためのちょうどよい姿勢にすることができない。仰向けの姿勢のまま、グレーゴルは今の仕事に対する様々な不満に思いを募らせる
出張旅行ばかりで気苦労が多く、顧客も年中変わるからまともな人付き合いもできない。
しかし、両親には商売の失敗によって多額の借金があり、それを返すまでは辞めるわけにはいかないのだった。

そうしてふと時計を見ると、出張旅行のための出発時間をとっくに過ぎている。心配する家族からドア越しに声がかけられる中、何とか体を動かして寝台から這い出ようとし、そうこうするうちにグレーゴルの様子を見に店の支配人がやってくる。
怠慢を非難する支配人に対して、 グレーゴルは部屋の中から弁解するが、どうやらこちらの言葉がまったく通じないらしい……。

|作品について

1915年10月初出。
ドイツ帝国にてドイツ語で執筆された。
グレーゴルに降りかかる"不条理"を描くこの作品は、アルベール・カミュの「ペスト」とともに"不条理文学"の最高傑作として名を刻んでいる。
なお、作者のフランツ・カフカは死後に作品が評価された人物として有名。

|"変身"したグレーゴルの描写

作中でグレーゴル・ザムザが変身するものは通常「虫」「害虫」と訳されるが、ドイツ語の原文はUngezieferとなっており、これは鳥や小動物なども含む有害生物全般を意味する単語である。
作中の記述からはどのような種類の生物かは不明である。 が、ウラジミール・ナボコフは大きく膨らんだ胴を持った甲虫だろうとしている。
『変身』の初版表紙絵は写実画家のオットマール・シュタルケが担当したが、カフカは出版の際、版元のクルト・ヴォルフ社宛の手紙で「昆虫そのものを描いてはいけない」「遠くからでも姿を見せてはいけない」と注文をつけていた。
実際に描かれたのは、暗い部屋に通じるドアから顔を覆いながら離れていく若い男の絵である。

オットマール・シュタルケが描いた「変身」の初版(1916年、ライプツィヒ、クルト・ヴォルフ出版社)の表紙。

|感想

まず第一に、この物語の前提となる"変身"は現実世界ではあり得ないことで、その現象があたかも本当に起こっているかのような文体で描かれていくため、この本を読んでいる間は独特の不思議な感覚に陥ります。