布地の販売員をしているグレーゴルは突然のことに戸惑いながらも、彼はもう少し眠ってみようと試みるが、体を眠るためのちょうどよい姿勢にすることができない。仰向けの姿勢のまま、グレーゴルは今の仕事に対する様々な不満に思いを募らせる
出張旅行ばかりで気苦労が多く、顧客も年中変わるからまともな人付き合いもできない。
しかし、両親には商売の失敗によって多額の借金があり、それを返すまでは辞めるわけにはいかないのだった。
そうしてふと時計を見ると、出張旅行のための出発時間をとっくに過ぎている。心配する家族からドア越しに声がかけられる中、何とか体を動かして寝台から這い出ようとし、そうこうするうちにグレーゴルの様子を見に店の支配人がやってくる。
怠慢を非難する支配人に対して、
グレーゴルは部屋の中から弁解するが、どうやらこちらの言葉がまったく通じないらしい……。
作中でグレーゴル・ザムザが変身するものは通常「虫」「害虫」と訳されるが、ドイツ語の原文はUngezieferとなっており、これは鳥や小動物なども含む有害生物全般を意味する単語である。
作中の記述からはどのような種類の生物かは不明である。
が、ウラジミール・ナボコフは大きく膨らんだ胴を持った甲虫だろうとしている。
『変身』の初版表紙絵は写実画家のオットマール・シュタルケが担当したが、カフカは出版の際、版元のクルト・ヴォルフ社宛の手紙で「昆虫そのものを描いてはいけない」「遠くからでも姿を見せてはいけない」と注文をつけていた。
実際に描かれたのは、暗い部屋に通じるドアから顔を覆いながら離れていく若い男の絵である。
まず第一に、この物語の前提となる"変身"は現実世界ではあり得ないことで、その現象があたかも本当に起こっているかのような文体で描かれていくため、この本を読んでいる間は独特の不思議な感覚に陥ります。